AI・データチャプター データサイエンティストの澤山です。
前職から自然言語処理に関する業務をおこなっており、現在は、生成AIの社内活用や開発、研究などをおこなっています。
今回は、金融領域でのLLMの動向調査、業務適用に関する知見獲得のために参加をした、言語処理学会 第32回年次大会(NLP2026) の参加レポートです!
今年の言語処理学会(NLP2026)について
言語処理学会 年次大会は、アカデミックから産業にわたる、自然言語処理にまつわる研究発表の全国大会です。
ここ数年は、LLM / 生成AIの急速な発展に伴い、参加者・発表者ともに大きく増加し、人工知能にまつわる研究発表の全国大会である、人工知能学会にも匹敵する規模になってきました。
今回開催されたNLP2026は、3/9から3/13にわたり、宇都宮駅直結の展示会場「ライトキューブ宇都宮」で開催されました。

学会の集計値として、今年の学会規模も歴代の規模を超える勢いで、参加者数(2,316人・歴代1位)、発表数(797件・歴代1位)、スポンサー数(100団体・歴代2位)と、拡大を続けていました。
学会でも集計値を公開しており、ここ数年の参加・発表増加が顕著であることが分かります。 www.anlp.jp
参加したセッションの内容
今回、参加したのは開催4日目(一般発表の最終日)の1日のみでしたが、発表最終日も多くの方が現地参加されていました。
当日も様々なセッション・発表が行われていたのですが、業務活用を見据え、以下トピックを中心に発表聴講等をしてきました。
金融・法務ドメインでのLLM活用
金融・法務ドメインには、特有の専門用語や記述表現があることから、オープンソースとして利用可能なLLMでは、期待する出力やタスク実行ができない場合があります。そのため、ドメイン特化した言語モデルを構築したり、タスク処理や解釈をおこなったりする研究が、金融ドメイン[1, 2, 3, 4, 5]、法務ドメイン[6, 7, 8]ともに、多くありました。
LLM活用における安全性
誰もが、生成AI(LLM)の利用ができるようになったからこそ、これまで以上にデータを安全に取り扱うことを意識し、遵守しなければなりません。特に、個人識別ができる情報や、配慮すべき情報の適正処理は必須であるため、今回の学会でも、法律・プライバシーを順守した上で、機密性の高い情報を処理するための研究[8, 9, 10]や、RAGがLLMに与える安全性に関する研究[11]などがありました。
RAG / Agentic RAG の高度化
社内業務における生成AI活用では、出力の精度や正確性だけでなく、コストや回答速度、利用者数を意識したシステム設計など、考慮すべき観点が複数あります。これら業務要件に即した最適なモデル選定や、コスト意識を持った効率的なAIワークフローの設計が必要であり、発表でも、検索目的に基づく最適な言語モデルやプロンプト、検索方式等の選定や、検索性能の強化に関する研究[12, 13, 14, 15, 16]などがありました。
全体的な学び
LLMを用いた研究が急速に進展していることを体感出来ましたが、一方で、特定ドメインにおける日本語の言語処理は、英語などの言語資源の豊かな言語と比較し、モデルのチューニングに用いるための、整備された日本語の言語資源やツールがまだまだ少ないです。このことから、まだまだ研究の余地があることがわかりました。
加えて、言語資源整備を並行しながら研究されている方々の尽力で、日本語の研究が進展していることに改めて気づかされました。実際に、言語処理学会では、優秀な研究だけでなく、優れた言語資源を作成した論文にも、言語資源協会と共同で言語資源賞を贈っており、日本語言語処理の発展には、欠かせないものになっています。 www.gsk.or.jp
スポンサーブース
各社・団体のスポンサーブースは、ポスター会場までの導線上に設置されていました。必ずブースを通ることから、自然と目につきやすく、各社様々な取り組みやデモがあることがわかりました。
印象として、生成AIがテキスト以外の様々な業務で適用できるようになったためか、言語処理以外の様々な業界の企業・団体がブース出展しているように感じました。
ブースによっては、今回の学会での発表スケジュール・発表内容なども発信しており、ポスター会場と同様に、企業説明にとどまらない研究議論も交わされていました。
まとめ
- NLP2026に参加しました。
- 参加者数、発表数、ならびにスポンサー数も過去最大規模と言うことで、非常に盛り上がっていました。
- LLMにまつわる研究論文が大半でしたが、理論から応用まで、様々な業界・企業の発表があり、学会としてのすそ野の広さを感じました。
- ポスター発表もぎわっており、産学問わず活発に議論できる雰囲気でとてもよかったです。
- 来年は、福岡開催と言うことで、発表や展示ができるとよいなと考えています。
おしらせ
- 6/8~6/12 に開催される、2026年度 人工知能学会全国大会(JSAI2026)に、プラチナスポンサーとして、ブース出展します!
- ご興味のある方は、ぜひ、お越しください! www.ai-gakkai.or.jp
参考文献
- [1] 金融市場翻訳に特化したLLMに対するLLM-as-a-Judgeベース蒸留学習
- [2] 日本語金融ドメインにおける大規模言語モデルの原因・結果表現抽出能力強化
- [3] ドメイン特化LLMの推論能力向上を目的とした合成指示データセットの構築と金融ドメインにおける評価
- [4] LLM による個別事情に応じた金融プランニング能力の評価 ―価値観適合性に基づくルーブリック評価フレームワーク―
- [5] 大規模言語モデルを用いた End-to-End の法令あてはめとその出力を利用した検索拡張手法の検証
- [6] 契約文書における条項マッチング手法の検討
- [7] 法律推論データセット学習による推論に強いモデルの構築
- [8] LLMによる合成データ生成を用いた個人情報分類の高精度化
- [9] 大規模コーパスにおける要配慮個人情報検出の精度向上
- [10] 固有表現抽出と差分プライバシーを用いた二段階匿名化手法と裁判記録における評価
- [11] RAGの検索設計がLLMの安全性に与える影響の体系的評価と分析
- [12] コストと精度を考慮した質問と文書に基づく適応的RAG選択
- [13] QAタスク回答中の趣旨・補足に対する不適・不足検出へのLLM適用
- [14] LLMによる動的属性タグ生成に基づくヘルプデスク情報の構造化検索
- [15] 埋め込みモデルのドメイン適応におけるラベルノイズに強い合成QAの作成
- [16] 日本語RAG検索における省略由来の曖昧クエリ検知