【新卒DSの挑戦】第4回金融データ活用チャレンジ参加・入賞報告 / JPX総研賞受賞者の取り組み紹介

はじめに

マーケティング本部 AI・データチャプターに所属している、2年目データサイエンティストの初田です。

現在の業務では、加盟店売上予測モデルの構築や、マーケティング施策のためのモデリング支援等に携わっています。

今回は、私が新卒1年目だった2026年1月14日から2月11日までSIGNATE上で開催されていた「金融庁 金融データ活用推進協会(FDUA)[1]共催 第4回金融データ活用チャレンジ」に参加し、協賛企業賞の1つである「JPX総研賞」を受賞することが出来ましたので、受賞に至るまでの取り組みや工夫をご紹介しようと思います!

金融データ活用チャレンジ取り組み紹介

金融データ活用チャレンジとは

金融データ活用チャレンジは、金融業界の魅力を発信し、金融業界振興へつなげ、金融業界内外問わず人材を育成・発掘することを目的として、金融庁と一般社団法人金融データ活用推進協会(FDUA)が主催するデータ分析コンペ ※で、2023年に第1回が開催され、今年で4回目の開催でした。

第1回、第2回はよくデータサイエンスコンペで出題される、機械学習を用いた精度を競い合うコンペでしたが、前回の第3回はRAG構築、今回は生成AIを用いた提案書作成が題材でした。近年の生成AIの発展を加味した、他にはあまりないような興味深いコンペでした!

※ コンペ内容の公開は事務局に確認済

コンペ概要

このコンペ内容は、仮想の建設・工事関連企業10社分の財務データおよび企業属性データをもとに、それぞれの企業の経営課題を抽出し、課題に対する打ち手を検討したのち、提案書として文書化することでした。

コンペの特徴は、生成AIを必ず使う必要があることです。提案書文書化までの過程で生成AIの活用は必須かつ人間のみで作成することはルール上禁止されていました。

また、使用できるツールや学習済みモデルに制限はなく、優良ツールも利用可能でした。上位者の多くの方が Claude Opus4.6 や Claude Code、Gemini 3.1Pro、Chat GPT 5.2 Thinking などを使用しており、提案書作成/評価の際に複数のモデルを使用している方もいらっしゃいました。

提出物の評価を生成AIでおこなう(AIスクリーニング)ことも特徴的で、中間評価と最終評価の計2回AIスクリーニングが行われ、提出した提案書がスコア化されました。

第4回金融データ活用チャレンジの概要(出典:第4回金融データ活用チャレンジ)

提供されたデータは以下の通りです。

定性データ(有価証券報告書):企業ごとの事業内容、リスク情報、経営方針など

定量データ(財務・属性データ):企業ごとの基本情報(所在地、業種等)、主要な財務諸表項目(PL、BS、CF)など

さらに、実際にAIスクリーニングの際に使用されるプロンプトが事前に公開されており、自身で作成した提案書の質をそのプロンプトで確認することができ、提案書修正に役立てることが出来ました。

さらに評価指標は以下の通りです。この5つの軸でそれぞれA、B、Cの3段階で評価される仕組みでした。そのため、AIスクリーニング用プロンプトを活用して提出前に手元で提案書の評価を大まかに知ることができ、全10企業でオールA評価を得ることを目標としました。

評価指標(出典:第4回金融データ活用チャレンジ)

また、提案書の作成にあたり、提供データ以外の情報やデータの活用も可能でした。

私は外部データとして、協賛企業として今回のコンペに参加していたJPX総研さんが提供してくださった「J-LENS(後述)」[2]という、東京証券取引所の上場企業がIR(投資家向け広報)で開示した資料を、生成AI(人工知能)を使い自然文で検索できるサービスのベータ版を活用しました。

中間評価までの取り組み

前述の通り、AIスクリーニングによるスコア化のタイミングは、中間評価とコンペ終了後の計2回でした。そのため、コンペ開催中に自身の提案書のスコアを確認できるのは、このタイミングのみでスケジュールがタイトだったのと、1つの提案書を作成するのに1時間半~2時間はかかったため、10個作成することは難しかったですが、何とか間に合わせました。

私は、この中間評価前は外部データを使わず10社分の有価証券報告書と財務データのみを生成AIに提供し、提案書を作成しました。その際、1度作成した提案書とAIスクリーニング時のプロンプトを1度用い、出力された改善点をもって生成AIに再度作成させた提案書を最終文書としました。

以下、この工程における提案書構築用のプロンプトの一部です。

使用した生成AIモデルは、文書作成時は Chat GPT 5.2 Thinking、文書評価時は Gemini Flash Thinking です。生成AIモデルを用途によって使い分けたことには、提案書が特定の生成AIモデルに依存した内容にならないよう品質を確保する意図がありました。

とある企業の有価証券報告書(PDF)と10社の3年分の財務データ(csv)を添付いたしました。 

あなたは、この企業の経営課題を抽出し、課題に対するうち手を検討してください。 

ただし、以下の項目を必ず満たしてください。 

評価視点1:全体構成、評価項目1:過去分析と未来提案の接続、評価のポイント(高評価の基準)1:過去3年の財務・事業分析(Past)と、未来への成長戦略(Future)が一貫した因果関係で論理的に接続されているか。 

評価視点2:地域性、評価項目2:地域特性の考慮、評価のポイント(高評価の基準)2:企業の所在地(商圏、人口動態、行政施策)を踏まえ、画一的ではない地域密着型の提案ができているか。 

評価視点3:業界特性、評価項目3:販路・商流の理解、評価のポイント(高評価の基準)3:官公庁/民間、元請/下請などの販路特性を把握し、それに応じた具体的な分析・提案となっているか。 

評価視点4:業界課題、評価項目4:近未来への対応 (GX/DX)、評価のポイント(高評価の基準)4:低コスト工法、環境技術(GX)、省力化技術(DX)など、技術トレンドへの投資や対応策を提案できているか。 

評価視点5:業界課題、評価項目5:需要減退・人材不足対応、評価のポイント(高評価の基準)5:工事需要の変化や深刻な人手不足(2024年問題、外国人材受入等)に対し、実効性のある解決策(歩掛管理の高度化、採用・定着策等)を示せているか。 

また、有価証券報告書のファイル名の末尾の数値が財務csvファイルにあるので、同じ名前の企業データを3年分取得し、分析に活用してください。 

箇条書きではなく文書化すること。 

プロンプトで作成した提案書を提出したところ、中間評価でなんと130人中3位という成績でした(130人の中には提出不備の参加者も含む)。

おそらく、評価項目をそのままプロンプトに反映させたことが高評価の要因と推察していますが、この順位は自分でもかなり想定外でした。

残りのコンペ期間中も、提案書のブラッシュアップをおこない、上位入賞を狙おうと意気込んだのを覚えています。

中間評価後の取り組み

中間評価後からコンペ終了までの期間では、前述の「J-LENS」を活用しました。

このサービスは、単語や文章を検索すると、AIがそれに見合った企業の開示資料(決算説明資料、統合報告書など)を最大10件提示してくれるものです。例えば、「人的資本に関する施策」と検索すると、以下の画像のように抽出理由とともに資料を提示してくれます。

J-LENS 検索画面(出典:J-LENS)

また、検索の際には期間、上場市場、業種、開示項目で条件付き検索が可能なため、提案書作成対象の企業に合わせて欲しい開示資料を検索することが出来ます。例えば、「建設業界の2024年問題」に関する資料を得たい場合は検索期間を2024年以前と以後に分けて資料を検索することで、各企業の業界全体の問題に対する対処策と実績を知ることが出来ます。

私は、このJ-LENSで取得した資料を、提案書の実現性や一貫性向上のために使用しました。今回提供された有価証券報告書は架空の企業のものなので、実在する企業の同様の事例を参考にすることでより実現性が高まると考えました。

このフェーズで構築した提案書作成までのステップはこちらです。

提案書構築ステップ と J-LENS活用箇所(著者作成)

提案書の質を保つため10社すべてこのステップを辿っています。各社で上記7つの工程を経て、最終的な提案書を作成しました。

ステップ1~4で一度提案書を作成し、ステップ5ではその提案書に対して運営より提供された評価用プロンプトを用いて改善点を明らかにし提案書の質を高める工夫をしており、後続のステップ6,7で提案書をブラッシュアップして最終提案書としました。

J-LENSはステップ3と6で活用し、ステップ3では5つの評価軸に対しそれぞれ4~5個の計20個ほど、ステップ6ではステップ5で指摘された改善点に対しそれぞれ3~5個の開示資料を抽出し、2ステップあわせて30個以上の開示資料を生成AIに提供し理論面での補強を図りました。

さらにJ-LENSで検索する際の検索文も以下のように工夫しました。

検索文の工夫(著者作成)

また、J-LENSで取得したPDF資料をそのまま渡しても、参照されない資料が多数ありました。そのため、より多くのJ-LENS資料を生成AIに参照してもらうため、J-LENS検索時に資料とともに表示される「抽出理由」を併せて生成AIに提供することで、実際に出典として扱う資料の量が増えていました。

とある企業の有価証券報告書(PDF)と10社の3年分の財務データ(csv)を添付いたしました。 あなたには、この企業の経営課題を抽出し、課題に対するうち手を検討してほしい。 ただし、以下の項目を必ず満たしてください。また、さらにその下の標準プロセスのStep1, 2をまずは実行してください。 

評価視点1:全体構成、評価項目1:過去分析と未来提案の接続、評価のポイント(高評価の基準)1:過去3年の財務・事業分析(Past)と、未来への成長戦略(Future)が一貫した因果関係で論理的に接続されているか。

評価視点2:地域性、評価項目2:地域特性の考慮、評価のポイント(高評価の基準)2:企業の所在地(商圏、人口動態、行政施策)を踏まえ、画一的ではない地域密着型の提案ができているか。

評価視点3:業界特性、評価項目3:販路・商流の理解、評価のポイント(高評価の基準)3:官公庁/民間、元請/下請などの販路特性を把握し、それに応じた具体的な分析・提案となっているか。

評価視点4:業界課題、評価項目4:近未来への対応 (GX/DX)、評価のポイント(高評価の基準)4:低コスト工法、環境技術(GX)、省力化技術(DX)など、技術トレンドへの投資や対応策を提案できているか。

評価視点5:業界課題、評価項目5:需要減退・人材不足対応、評価のポイント(高評価の基準)5:工事需要の変化や深刻な人手不足(2024年問題、外国人材受入等)に対し、実効性のある解決策(歩掛管理の高度化、採用・定着策等)を示せているか。

今後の標準プロセス(5評価軸に完全準拠) 

Step 1:当該企業の課題抽出(Past:3年の財務・事業) 
財務3年(PL/BS/CF+主要比率)と事業(受注・顧客・地域・投資・人員)から、 
「因果で説明できる課題」に落としてください。 
ここで作るのは「症状」ではなく 原因仮説→結果の鎖です。 
例:受注構造→粗利→キャッシュ→投資余力→成長制約 
ここは評価軸1(Past→Future接続)の土台となります。 

Step 2:J-LENS探索用のワード/フレーズ/一文をこちらで設計 
評価軸2~5を漏らさないよう、カテゴリ別に探索文を生成してください(テンプレ化)。 
地域性(商圏/人口動態/行政施策) 
商流(官公庁/民間、元請/下請、総合評価、維持管理など) 
GX/DX(低コスト工法、環境、ICT施工、BIM/CIM、遠隔臨場など) 
人材・需要(2024年問題、歩掛、採用/定着、外国人材など) 
収益改善(価格転嫁、外注費、原価管理、受注ポートフォリオ) 
さらに、**「広く拾う文」+「絞り込む文」**の2段構えにして、拾い過ぎを防いでください。 

このようなフロー・プロンプトで作成した提案書の最終的な順位は提出した407人中54位と中間評価の順位からはだいぶ下がってしまいました。要因としては、提案書評価時に Gemini を用いており、かなり甘めの評価が下されて、提案書の改善をそれに頼ってしまったことにあると考えています。

他参加者によると Gemini は評価が甘く、ChatGPT は比較的厳しめの評価を下してくれたようです。複数のモデルの傾向を理解し提案書評価に活用することで更なる提案書の質向上を目指す工夫をされていました。[3]

上位陣の解法を拝見すると、Claude Opus4.6 や Claude Code を使用している方が多い印象でした。また、モデル以外では、生成AIに資料を読み込ませる際にPDFのままではなく、一度生成AIが解釈しやすいとされているマークダウン形式に変換する工夫をされている方もいらっしゃいました。[3][4][5]

今回私が受賞したJPX総研賞は、「コンペ終了約1週間後までにSlack内のチャンネルにJPX総研が提供したサービスの活用方法と、新たに提供して欲しいデータ・サービスの要望を提供した人」の中から、JPX総研の方が選考する方式でした。

本記事の内容+サービス改善要望を加えて資料でまとめて提出したところ、上記J-LENSの活用方法が認められ、協賛企業賞のうちの一つであるJPX総研賞をいただくことが出来ました

表彰式

表彰式は3月6日(金)に丸ビル内の会場で行われました[6]

JPX総研賞を受賞した私は賞状とJPXの景品詰め合わせをいただきました!

表彰式では、他の受賞者の方と解法の共有や名刺交換、お互いの業務紹介などをすることができ、非常に有意義な時間を過ごすことが出来ました。

賞状と頂いた景品(著者撮影)

おわりに

本記事では第4回金融データ活用チャレンジでの取り組みを紹介しました。

中間評価で3位を取れただけに最終順位は残念な結果でしたが、コンペ期間中に活用していたJ-LENSが上手く受賞につながり、とても嬉しかったです。また、他の優秀な参加者の参加記からさまざまな知見を得ることが出来たので参加した甲斐がありました。

来年も参加し、今度こそは総合部門で入賞したいと思います!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

参考文献